「いつでも死ねる。」
以前、私の職場のスタッフだった方から久しぶりに電話が来ました。
1年半ぐらい働いてくれたパートさんですが、引っ越しのために残念ながら退職されてしまいました。
元々はご主人が大企業にお勤めで、
こんなパート仕事なんて必要ないような方なんですけど、
ご主人とは別居してお嬢さんと二人で暮らしていたのです。
ご主人、なかなか曲者でして、私とは夫の悪口大会でよく盛り上がっていました。
おまけにお嬢さんが娘の中高の先輩だったということもあり、
辞めた後も時々電話がかかってきて、近況を話していたんですよね。
でもそれも段々なくなり、気づくと一年以上のご無沙汰になっていました。
久しぶりの電話ではまずは今の職場の状況を話したり、
彼女の職場の話しを聞いたり。
それで、「お嬢さんは元気?」と私は聞きました。
実はお嬢さん、精神疾患があり仕事をするのが困難な状況でした。
電車はなんとか乗れますが、バスには乗れない。
仕事先でも、対人関係がダメですぐに辞める。
事務系の仕事なのにも関わらず電話がとれない。
など問題が山積み。
ご主人は高収入にも関わらず、「家を出ていったものに金はやらん!」と一切の援助なし。
つまり彼女はこんなパート仕事の細々とした収入だけで、
そんなたいへんなお嬢さんを抱えて暮らしていたんです。
心配したところでどうにもできないのに、「どうしたらいいんだろう?」と私はよく気にしていました。なんとか収入が増えるように休みの日に出てもらうようにしたり、
残業を頼んだり。
でも、彼女は割とあっけらかんとしていたんですよね。
お嬢さんの病気のことも気にしてるんだか気にしてないんだかわからないぐらい淡々と話していたし。
まあ、そんなこんなで久しぶりの電話で近況を報告しあったあと、
私がお嬢さんのことに触れたら、
「その話しがしたくて電話したの」と。
なんでも、二年前ぐらいに勤めた会社がとてもよくあっていたとかで、
本人、ほとんど病気は完治に近い状態。もう薬も随分飲んでいないとのこと。
おまけに、契約社員で入ったにも関わらず半年で正社員になれた、
更にそこで彼氏も出来て結婚の話しも出てきたとのこと。
「もう、私、本当に嬉しくて。ああ。これでいつでも死ねるなあって安心した」
と言っていました。
繰り返しますけど、本当に自分の現状(夫と別居。援助なし。娘は精神疾患。本人の仕事はパート)をこの人わかってるのかな?ぐらい淡々としていた人だったんですよ。
でも、今、幸せなんだなとわかって初めてそれまでの不幸の深さがよく伝わってきました。
昨日、うちの娘はお友達と一泊二日で遊びに行ったのでゆうべは久しぶりに一人、のんびりな時間を過ごせました。
普段は平日に飲むと娘に怒られるので「鬼の居ぬ間に」の白ワイン。
子供の人生が段々、自分とは離れていくときが来るんですよね。
寂しい反面、自分が自由になる身軽さもあります。
それこそ「何があっても死ねない」という執念からも開放されるわけで、
「いつでも死ねる」って究極の自由だなあ。
と思った、電話でした。